COLUMN

コラム

技能実習制度と、今後の外国人採用について

~監理団体経験を経て感じた、これからの外国人採用はどのように変わるべきか~

はじめに

「先生こんにちは!」

私が勤務していた監理団体の実習生は、みんな元気いっぱいでした。

 

私は、約4年間国内大手監理団体で技能実習生の受入から就労、生活支援などの国内支援をはじめ、第三国からの送り出し国からの受入をはじめるべく、新たな送り出し国とのプロセス構築や教育制度構築のプロジェクト、また技能実習から特定技能への移行プロジェクトなども担当していました。

現在日本国内には約146万人※1の外国人材がさまざまな分野ではたらいています。今後、外国人材の入国増加が予想されている中、これまで外国人材を採用しなかった企業も検討を始めていますが、外国人材の在留資格とそれに伴う人材のレベルなど、詳細の情報が正確に知られておらず、各企業に最適な採用連略を妨げにしています。

※1「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成30年10月末現在) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03337.html 

 

日本の現状、外国人材はなぜ必要なのか?

日本は現在、超高齢化社会が進み、若年層減少による今後の労働力不足が懸念されています。パーソル総合研究所の発表によると、日本は2030年には644万人の労働力が足りないと予想されています。

<出典:パーソル総合研究所労働市場の未来推計 2030

そのため政府としても様々な政策を施し、あの手この手で労働力を確保してきた経緯があります。その中の1つが、外国人材採用による労働力確保です。特に労働力が足りていない製造業や、医療福祉、サービス業などへの外国人材の受け入れが活発になってきています。

例えば在留資格“技能実習”や“介護”といったものが挙げられます。

1993年より実施されている技能実習制度は、本来日本の持つべき産業分野での技能習得と、母国での技術転用を主とした在留資格ですが、実際は、この在留資格を“労働力”が足りない各分野の「労働力」獲得に活用していることが現状です。

一部の悪質な受入れ企業や監理団体が、外国人材を違法な労働環境で就業させていたことなどが明るみに出たことから、政府は2017年より外国国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(いわゆる新技能実習制度)を施行してきました。

 

だが、やはり本来あるべき姿である“実習”とかけ離れてしまった実態は続いており、政府は新たに、深刻化する人手不足への直接的な対応として、一定の専門性・技能を有した人材を即戦力として受け入れる在留資格「特定技能」を創設しました。

特定技能は、対象分野を特に人材が足りない14分野に限定しており、本当の意味での「人材不足」で苦しむ業界で外国人材を受け入れて活用できる制度ができたといえます。これにより、今後の日本の外国人材の受け入れ・採用が大きく変わると考えます。

だからこそ、企業の長期成長戦略を見据えた外国人材活用の検討を進める必要があると感じます。

 

技能実習生で例えると、現地で日本語を学び、候補者選定(面接)、ビザの手続きを行うなど入国準備に必要な期間はおよそ1年。実際にはたらき手がいなくなってから外国人採用を考えても採用までは1年以上かかることも多く、日本人の採用と同様に、長期的な観点が必要なのです。

<出典:外国人雇用に関する企業の意識・実態調査

上記調査では、既に外国人材を受けれている企業は、今後の人材確保対策の優先順位として外国人材採用の強化を1位に挙げていたが、採用していない企業では、12位と優先順位がぐんと下がってしまうことがわかりました。

初めて外国人材を採用することには、業務内容や企業風土、人事制度や準備などさまざまな懸念点があり一歩踏み出すことが難しいものの、一度採用・活用したことがある企業は、今後も引き続き優先度を高く設定していることがわかります。

 

・外国人材の採用には1年以上かかるケースもある

・すでに外国人材を採用し活用している企業は引き続き外国人材採用を検討している

上記理由から、現在人材不足に悩む企業は、日本人/外国人で分けて人材戦略を考えるのではなく、企業の「いま必要な人材」はどんな人物で、どう採用していくかを総合的に検討する必要があります。

どんな外国人が日本に来るのか~外国人材のスキルはさまざま~

KV

現在新型コロナウイルス感染症の影響で、外国人材の入国が止まっている状況です。ただ、日本の労働人口の減少、超高齢化社会は変わらない事実のため、今後世界的な感染症状況がよくなり、日本の経済活動も活発になると自然と外国人材の採用ニーズは増えると考えられます。

今こそ、外国人材採用を検討している企業は、どんな人材が必要なのか改めて戦略を考える時期だと思います。

ただ、イマイチ想像がつかない人物像。

果たして、どんな人がやってくるのでしょうか。

当たり前な回答になってしまうかもしれませんが、技能実習で入国する人材は、まさにスキルも、日本語力も、学歴も、本当に「さまざま」という印象でした。

私の印象としては、6~7割は地方や田舎に住んでいる大家族の一人、という人が多く、兄弟が海外に出稼ぎに行くことが当たり前といった印象でした。当時の記憶では、多くは高校や専門学校卒の学歴で、就業経験も農業手伝いや、工場などではたらいていたという人が多かったように思います。中には裕福な家族の出身で、日本文化に興味を持ったことや、単に人生経験を積むために技能実習で来日したという人もいました。

フィリピンの人たちは明るく笑顔な人が多い印象で。ベトナムは、少しシャイだがコツコツ勤勉な印象…など国によっての特徴もありました。

技能実習制度で来日する人材の差に関しては、その人の「スキルや日本語力」をベースにおいてないため、現地で人材を募集する人材会社や、日本語などの教育を行う機関などの影響が大きいと思います。

 

では一方、特定技能だとどのような人材が集まっているのでしょうか?

特定技能の在留資格は

“一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていくもの”(法務省資料より)

という記載があり、技能実習のように来日して、知識や技能を“学ぶ”ではなく、外国人材がすでに持っている知識や技能を“発揮”する、という違いがあるため、必然的に人材の特徴も変わってきます。

弊社PERSOL Global Workforceのフィリピン現地日本語訓練施設(PERSOL Language Institute)を例としてあげると、日本語を学習している介護特定技能候補生は、30歳代が中心です。フィリピン国内の看護や介護を専攻した大学卒の割合が8割を超えており、その中でもフィリピン国内の看護師資格所持者が3割いることも特徴で、全員が社会人経験を持っていることも弊社特定技能候補生の特徴といえるかと思います。

「今までの経験を活かし海外ではたらく」という概念ももちろんあるものの、将来のスキルおよびキャリアアップ志向が強いというのも特定技能の特徴です。経験者であり、その業務を理解しているため、入国後の業務内容についてミスマッチング等も技能実習に比べ少ないことも予想されます。

十人十色なのは外国人材も同じです。「外国人材を採用する」と検討し始めるとき、どんな人材が思い浮かびますでしょうか?なんとなく、日本人より低いレベルの人材を想定してしまい、日本人が忌避する仕事や低賃金で雇える人と想定することはありませんでしょうか?技能実習では、最低賃金程度の賃金で“実習”という名の“労働”が当たり前に行われており、その考えが一般的になっていることも否めません。

 

「外国人材」とひとことで言っても、スキル・背景・性格・キャリアビジョンなどを含め、一人ひとりの個性や特徴があります。日本人を採用するケースと同じく、どのポジション(業務)にどんな人が的確化、しっかり見極めたうえ採用する必要があるのはそのためです。

外国人材が定着するためには~はたらきたい国、日本へ~

日本語があまり上手ではない。東南アジアの賃金に比べて高ければいい。それでも採用ができた時代は、実は終わりを迎えています。東南アジアの人々は、以前は日本で仕事をすることにあこがれを抱いていたようだが、それも過去の話になっています。

現在では韓国、台湾などの諸外国ではたらきたいと思う人が増え、給与や待遇面でも外国人材を受け入れる北欧、欧州、アジア各国の中でも日本の競争力はすでに下がってきている現状もあります。

 

技能実習では原則として3年もしくは5年といった期間、転職することはできなかったですが、新設された「特定技能」では転職が可能となりました。「外国人材の離職」を懸念し、転職可能となったことを企業に不利だと考える方もいらっしゃいますが、実は、この「転職可能」の背景には、外国人材にも日本人同様の労働環境を提供することにあります。

転職が可能=外国人材も労働条件を比較の上、転職を考えることが想像できる。その中で特に比較するであろうことが「日本人との待遇格差」であります。

目の前の人手不足を解消すべく、急いで技能実習生の受け入れを決めたものの、実際蓋を開けてみるとコ日本人採用よりも高いコストに驚く企業は少なくありません。特に監理費として月々3~7万円程度の費用を監理団体に支払わなければならないシステムのため、最低賃金で外国人を雇用しても、監理費を含めると1名あたりの人件費は日本人とさほど変わらない額になってしまうことがほとんどです。結果、外国人材の賃金は低くなってしまい、日本人と同じ仕事をする場合も賃金の差が生まれることもあるのです。

<出典:外国人雇用に関する企業の意識・実態調査

技能実習生の中では、こういった日本人の給与格差を理由に、労働意欲が低下する者も多く、転職できない技能実習生の場合はボイコットや、上司の指示を聞かない、最悪のケースは途中帰国をすることもあります。

国内でも同一労働同一賃金が始まっていますが、世界ではSDGsで“すべての人々の完全かつ生産的な雇用とはたらきがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する”という目標が掲げられています。外国人材を受け入れるにあたり、もう“低賃金”というワードは時代遅れになりつつあるのです。

 

また、もうひとつ、離職率・失踪率を抑えるために重要なのは「コミュニケーション」です。

<出典:外国人雇用に関する企業の意識・実態調査

上記結果では、コミュニケーションの多さと日本での居住希望がほぼ比例していることがわかります。周りの日本人同僚としっかり交流・コミュニケーションをとっている職場では、外国人材が「じぶん」を表現することができ、仮に日本語のスキルが高くなくても、ストレスをため込まずに楽しく仕事ができると思います。

「外国人だから」と特別扱いすることではなく、母国を離れてはたらく孤独感を理解し、寄り添うことが大事です。初めて生まれ故郷を離れ、東京に来た日本人と同じ、もしくはもっと強い孤独感や寂しさを感じているかも知れません。外国人だから、というより、外国人も同じ。これがスタンダードな企業ほど、双方の理解も得やすいのかもしれません。

 

技能実習生の失踪について報道されていますが、大手の監理団体の実習生は失踪率が1%以下です。実習生の失踪の原因はさまざまですが、最低賃金割れや、法外な借金や搾取、私生活の制限、個人の尊重などは、「日本人の採用」では当たり前なことを実施しなかったことが本当の原因とも言えます。

その為、まずは信頼できる送り出し機関を見つけるとともに、企業も一概にただ「いま足りない労働力を補うための単発採用」と考えず、実際に候補者に合ってみたり、彼らの能力と特徴に合わせてが外国人受け入れを検討することが外国人材の定着にとっては何より大事です。

 

 

大場 将伍

大学卒業後、飲食サービス業を経て、大手外国人技能実習生監理団体に入社。外国人と日本企業の橋渡し役として、支援業務に従事。2016年より、国内大手製造メーカーと、プロジェクトリーダーとして国内最大規模の実習生受け入れ業務に従事。2018年より、ベトナムでの実習生事業立ち上げ、また特定技能移行プロジェクトに参加。4年余りの監理団体勤務を経て、現在はパーソルグループにて国内支援の仕組みを中心に研究・構築中。

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