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2025年8月1日
いまさら聞けない!外国人が日本で働くために必要な「就労ビザ」とは?
~技人国/特定技能/技能実習(育成就労)を比較!~
日本で働く外国人は、2024年10月末現在2,302,587人となり過去最多を更新しました。日本で働く外国人を見かけることは珍しいことではなく、人材不足を解決するため外国人材の受け入れを検討する企業も増えました。
そこで、今回は、外国人材を受け入れるときに知っておくべき「就労ビザ」についてご説明します。

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【目次】
1.在留資格と就労ビザについて
・在留資格とビザの違い
・就労ビザとは?
2.技人国/特定技能/技能実習について
・技術・人文知識・国際業務
・特定技能
・技能実習
‐ 新しい制度、<育成就労>とは?
3.就労ビザに関する落とし穴
・就労ビザの申請にかかる期間
・申請が不許可になるケース
・担当可能な業務や雇用形態
最後に:どんな「就労ビザ」の人材を採用すべき?
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1.在留資格と就労ビザについて
・在留資格とビザの違い
在留資格は、外国人が日本に入国・在留して従事することができる活動、又は入国・在留できる身分や地位について類型化し、法律上明らかにしたものです。現在日本政府で定めている在留資格は計29種類。日本に在留している外国人は必ず「在留資格」が必要です。
ただ、外国人材の受け入れを検討している皆さんには「在留資格」とう言葉よりも「就労ビザ」が馴染みのある言葉かもしれません。結論からいうと、在留資格とビザは別物です。
ビザは、「日本への入国(上陸)許可を得るための書類」で正式には「査証(さしょう)」と言います。在留資格は、「日本国内での活動を法的に認めるステータス」のことで、入国後日本に滞在するために必要とされるものです。なので、簡単にいうと、ビザは入国時に必要なもの、在留資格は滞在のために必要なものです。
・就労ビザとは
外国人材が日本で働くためには「就労が可能な在留資格」が必要です。日本で就労が可能な在留資格は、下記2つの分類で考えられます。「活動資格」の中で、就労が可能な在留資格は何種類もあるため、これらすべてを通称「就労ビザ」と表現することが多いです。
身分資格 | 活動内容に制限がありませんのでどんな仕事にも就くことできる。 |
活動資格 |
就労が可能な在留資格と就労ができない在留資格に分けられている。 就労が可能な活動資格といってもどんな仕事でもできるわけではなく、在留資格ごとにできる仕事内容が決められるので注意が必要。 |
下記の在留資格は、日本での就労が認められている、就労ビザ(在留資格)のリストです。(一部抜粋)ただし、下記在留資格を持っている方でも、どんな仕事にも就けるということではなく、各在留資格にて定めている条件に合った仕事に従事することが可能ですので、注意が必要です。
在留資格の種類 | 主な対象者 |
技術・人文知識・国際業務 | 専門職(IT、技術者、マーケティング等) |
高度専門職 | 高度なスキルや知識を持つ人材 |
経営・管理 | 企業の経営者や管理者 |
研究 | 日本の研究機関で働く研究者 |
技能 | 特定の技能を持つ職人や専門家 |
特定技能 | 労働力不足分野で働く技能者 |
医療 | 医師、看護師など医療従事者 |
教授 | 大学などの教育機関で働く教授や講師 |
芸術 | 芸術活動を行うアーティスト |
興行 | 芸能活動を行う俳優、歌手、プロスポーツ選手 |
※すべての在留資格一覧をご確認したい方は、こちらをご参照ください。
出入国在留管理庁:在留資格一覧表
また、下記の在留資格は、本来就労のための在留資格ではありませんが、一定の条件を満たせば就労が可能になる場合があります。また、出入国在留管理庁から「資格外活動許可※」を取得する必要があります。
※https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00045.html
【留学】
日本の教育機関(大学、専門学校、日本語学校など)で学ぶことを目的とする在留資格です。原則として学業に専念する資格であり、就労は認められていませんが、働く時間(週28時間以内)と業務内容(飲食店、コンビニなどでのアルバイト可能。専門職やフルタイムの仕事は不可…など)の制限のもと、働くことが可能です。
【技能実習】
本来、技能実習は、「日本の技術や技能を学ぶ」ことを目的としている在留資格で、就労を目的とする在留資格ではありません。ただ、実習目的での業務への従事が認められており、実質的には日本で働いている状態になるケースがほとんどです。勿論、こちらの在留資格にも条件があり、技能実習計画の範囲内で業務に従事することが許可されています。また、分野の異なる仕事や業務を担当することはできません。
【特定活動】
特定活動は、ワーキングホリデーやインターンシップなど、特定の活動を目的とした在留資格で、就労が認められるケースがあります。ワーキングホリデーの場合、滞在中に一定の範囲で働くことが認められており、例えば、ワーキングホリデーで日本を訪れた外国人が、旅行資金を補うために飲食店や小売店で働くといったケースが考えられます。

2.技人国/特定技能/技能実習について
ここからは、日本で就労中の外国人材の多くが該当する代表的な3つの就労ビザをより詳細にご紹介します。
・技術・人文知識・国際業務
通称、技人国(ギ・ジン・コク)と呼ばれることが多いこちらの在留資格は、外国人が日本の企業や団体で専門知識や技術を活用した業務に従事することを目的としています。こちらの在留資格は、学歴または職歴を満たすことが必要で、大学卒業以上(日本または海外の大学)もしくは日本の専門学校を卒業で、従事する業務に関連する専門分野の学位を持っているか、従事する業務に関連する職歴が原則として10年以上(国際業務分野は3年以上)あることが求められています。そのため、所謂「日本人の新卒(4大卒)」同様の仕事に従事することができ、キャリアプランとしても、管理職やエキスパートとして成長することを見据えることが必要となります。
就くことが可能な分野は在留資格の名前の通り3つの分野に分かれます。
技術(Technology): ITやエンジニアリングなどの専門的な技術職。
人文知識(Humanities): 経済学、法学、社会学などの知識を活かした事務職。
国際業務(International Services): 語学力や異文化理解を活かした業務。
在留期間は、5年、3年、1年または3カ月ですが、在留資格を何度も(制限なく)更新することが可能です。また、家族と一緒に日本に住むことも可能な在留資格です。
・特定技能
特定技能は、日本国内の深刻な労働力不足を補うために、2019年4月に創設された在留資格制度です。創設された当時は、よく「技能実習」と間違われることもありました。この制度と技能実習制度との違いは大きく2つです。1つ目は労働力としての外国人を受け入れることを目的としていること、2つ目は在留資格を取得するために「日本語」と「技能試験」に合格する必要があることです。
基本的な日本語力(日本語能力試験N4レベル)を持ちと各分野に関する技能試験を合格していることから、一定の専門性や技能を有する外国人材を即戦力として受け入れることができます。
対象の分野は、2024年3月に「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野が新たに追加され、特定技能1号の場合、現在16分野となっています。また、2025年5月に新たに「リネンサプライ」「物流倉庫」「資源循環」の3分野の追加を検討していることも明らかになりました。
※特定技能の対象分野について:
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/10_00179.html
特定技能は1号と2号があり、1号は最長5年間の滞在が可能ですが、2号になると滞在期間の制限がなくなり、家族を日本に呼ぶことも可能になります。特定技能2号は、外国人材にとってはより中長期で自分のキャリアプランや生活を計画し取り組むことができるほか、受け入れ先の企業・事業者にとっても「いつか帰る人材ではなく、自社の経営・人事戦略の元、成長していく人材」として考えることができるようになります。
1号から2号になるためには、一定の条件を満たす必要があります。
【特定技能1号から2号へ移行するためには】
特定技能2号評価試験に合格する必要があります。この試験では、特定技能1号で培った経験を基に、より高度な技能や専門知識が問われます。試験の詳細や日程は、各分野の試験運営機関(管轄省庁)にて発表しています。また産業分野によっては、日本語能力(N3以上など)や実務経験年数(3年以上など)などの要件が課されます。
【2号移行が可能な分野】
現在特定技能2号への移行が可能な分野は、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の11分野です。
・技能実習
技能実習制度は、前述の通り外国人の日本国内での就労ではなく、「技術移転と国際貢献」を目的とし、日本の技能や技術を伝え、その国の経済発展に寄与することを目指しています。ただし、これまで技能実習制度は、日本の労働力不足を補うために活用されていた制度であり、現在(2024年10月末基準)も「技能実習」として470,725人の外国人が日本ではたらいています。なお、本制度は、2030年までに廃止される予定で、新しい「育成就労」制度が2027年からスタートされます。
・新しい制度、<育成就労>とは?
育成就労制度は、2024年に発表された、これから新設される在留資格のことです。技能実習制度が「技能移転による国際貢献」という本来の目的よりも日本の喫緊の労働力不足の解決のために活用されていることから様々な課題が浮き彫りになっていました。上記を踏まえ、日本政府は技能実習制度を見直し、日本の人材不足分野における人材の育成・確保を目的とする「育成就労」制度を創設することを発表しました。(※育成就労制度は2027年の6月までにスタートする予定)
育成就労の詳細に関しては、まだすべての詳細が発表されていることではありませんが、介護、建設、農業など17分野において、日本で3年間働くことで、特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保することを目的とします。
また、「技能実習制度」では、別の企業などに移る「転籍」(転職)が原則できない問題がありましたが、「育成就労制度」では1年以上働いた上で一定の技能がある人などは同じ分野に限って認められるなどの変化も盛り込まれています。
3.就労ビザに関する落とし穴
ここまで在留資格と就労ビザについて、また特に多くの企業、事業者にて活用している技人国、特定技能、技能実習、そしてこれから施行される育成就労についてお伝えしました。
外国人材を採用するためには、在留資格および国外(海外現地)からの人材か、国内の人材かなどにより手法は変わりますが、代表的には以下の方法で採用することができます。
1)求人、求職サイトで募集
2)外国人材のマッチングイベントに参加
3)人材会社からの紹介
4)自社サイトおよび自社独自ルートでの採用
自社にあった人材が見つかり、採用を決めて内定を出した後は「在留資格」の申請手続きの段階に入ることになります。実は、日本人の採用と違う部分や注意点は、このステップに多く、内定から実際の就労開始までの過程でもしっかり対応が必要です。
・就労ビザ(就労目的の在留資格)を取得するためにかかる時間
在留資格や時期によって一律、何カ月かかると答えることは難しいですが、新規取得の場合は短くても2~3カ月ほどかかります。4月入社を見込んで審査申請が多くなる春先などは4カ月以上かかることもあります。また、この期間には、必要書類を準備する時間は含まれておりませんので、就労ビザを取得するための審査には数か月かかることを念頭に置いて、採用・受け入れ計画を立てることが大切です。
・申請が不許可になることも
在留資格取得の申請を行うと適切かを判断する審査が行われますが、その結果が不許可になるケースもあります。申請を行うと100%通る、取得できる、ということではありませんので注意が必要です。
不許可になる原因はいろいろありますが、大きく分けると3つの理由を挙げられます。
‐ 準備した書類に不備や不足
‐ 外国人材側が申請した在留資格の条件を満たしていない、もしくは欠格理由がある
‐ 受け入れ先(企業、事業者)の経営状況が不安定、労働条件が不適切
担当可能な業務や雇用形態
在留資格が無事取得でき、入国して仕事を開始した後も注意点があります。在留資格によりその詳細内容や条件は異なりますが、外国人材の就労ビザには「担当可能な(担当すべき)業務や雇用形態」が決まっています。例えば、特定技能の外国人を採用し、数か月後当分仕事がないからアルバイトの雇用形態に変更することはNGです。また、農業分野の外国人材に突然農場に併設されているレストランの仕事を手伝ってもらうことなど、取得した分野と異なる仕事を担当してもらうこともやってはいけません。
在留資格の取り消しや、今後の外国人の採用ができなくなる可能性もありますので、外国人材の採用の時は在留資格の特徴やそれに伴う注意点、NG事項を熟知しておく必要があります。

最後に:どんな「就労ビザ」の人材を採用すべき?
ここまで在留資格、就労ビザについて全体像と、代表的な在留資格をご説明しました。在留資格周りの手続きや知識は、外国人受け入れの際に知っておくべきことでありながら、その膨大な内容、慣れない手続きなどは外国人材の採用を躊躇することになる原因でもあります。そんな時は、周りの行政書士や、人材会社など専門家、地域の行政で外国人材採用をサポートしている部署などに相談することをおすすめします。
また、これからどんな外国人材を採用したほうが良いか迷う方も多いと思います。今後、会社の管理職として成長することも見据えて技人国の外国人を採用すべきか、即戦力となる特定技能人材かを迷われる場合は、皆さまの会社や組織の現状、今後の経営・人事戦略の元、いま採用すべき外国人材はどこかを中長期目線で検討していただければと思います。もしも迷われるときは、下記問い合わせリンクから、ぜひPERSOL Global Workforceにご相談ください。

PERSOL Global Workforce株式会社 事業本部 キャリア推進室 室長 川口 賢
2006年にパーソルビジネスプロセスデザイン株式会社に入社。パーソルグループ全体のIT環境を構築・統合するプロジェクトのPMや、シンガポールでのリージョナルITチームの立ち上げサポートなどの経験を経て、2021年に外国人に特化した人材サービスを提供する同社へ入社。現在はキャリア推進室をはじめ複数室のマネージャとして外国人材の育成・募集に関するさまざまなプロジェクトを率いている。