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PERSOL Global Workforce代表が答える。外国人材採用のアレコレ2回目
現場で活躍する外国人材の育て方――「本当に任せられますか?夜勤はいつからできますか?」の答えは

コラム
2026年5月13日
PERSOL Global Workforce代表が答える。外国人材採用のアレコレ2回目

はじめに

「外国人を採用したいが、本当に日本人と同じように働いてもらえるのだろうか」——外国人材の紹介を手がける当社に、企業の採用担当者から最もよく寄せられる言葉です。労働力不足が深刻化する日本の介護現場など、多くの分野で外国人材の採用は現実的な選択肢となっています。以前は人件費を抑えるためという側面もあったとしたら、最近は「本当に人が採用できない。人が足りない」という方がほとんどです。しかし、初めての採用に踏み切れない企業の多くは、「不安」という壁の前で立ち止まっています。
その不安は決して根拠のないものではありません。言葉の壁、文化の違い、残業・夜勤や緊急対応など自立した判断が求められる場面での不安——採用担当者が気にする点は具体的で、現場に即しています。だからこそ、その不安に正面から向き合い、「何が共通で、何が異なるのか」を整理することが、外国人材の受け入れを成功に導く第一歩となります。
今回は、当社で紹介数が最も多い介護分野の実例をもとに、外国人材が現場で活躍するための実践的な知識と育成のポイントを解説します。介護分野に特化した内容になりますが、語学支援や長期育成の考え方は他の産業分野においてもきっと参考になると思います。

日本人と外国人の共通点:介護技術は現場で育つ

日本人、外国人共通の点として「介護技術」があげられます。海外は日本ほど高齢化が進んでおらず、介護産業も発展していないため、介護の業務経験を持っている人材はほとんどいないです。このため、外国人が日本の介護施設で働けるのかという疑問をもつ採用担当者もいます。しかし、日本人を採用するケースを考えていただきたいです。介護の専門学校や大学を出ている、もしくは数年間の介護職の経験を持つ求職者は多くありません。現在働いている介護従事者の多くが未経験で転職して、現場で知識と経験をつみ資格を取得して戦力になっています。実際多くの介護職採用の求人広告などでは「未経験歓迎」という言葉も見受けられます。
外国人も同じです。たとえ未経験者でも、現場での技術、知識を学ぶことで日本人同様に戦力となっていきます。外国人を積極的に採用している介護施設の採用担当者に聞くと、介護の仕事はむしろ人柄や介護適正があることが重要で、介護技術は施設内で教育することで十分対応できるという話をよく聞きます。
一方で、介護分野で働く日本人と外国人材の年齢が相互補完的になっていることも重要です。厚生労働省のデータによれば、介護従事者の平均年齢は46.4歳であり、50代以上が全体の約4割を占める一方、特定技能・技能実習で来日する外国人介護人材の多くは20代から30代前半の若手層が多い傾向です。日本人で圧倒的に足りない若手人材を外国人材が補完している構造は、今後の介護現場の持続可能性を考えるうえで極めて重要な視点と言えます。これは「後継者不足」で悩まれるほかの産業にも適応できる話です。

介護従事者 年齢層別構成比

外国人ならではのポイント:日本語能力とコミュニケーション

それでは外国人ならではのポイントは何か――。
最も大きな違いは日本語能力です。特定技能1号の場合、入国時に日本語能力試験(JLPT)N4程度のレベルが必須で、日常的な挨拶や簡単な業務指示の理解は可能です。しかし、このレベルは「ゆっくり話されれば日常的な話題をほぼ理解できる」レベルであり、介護の現場で求められる専門用語や入居者との細やかなコミュニケーションが可能なレベルとは、ギャップがあります。
このギャップを埋めるための受け入れ企業側の工夫が就業スタート後に職場に定着するための重要なポイントとなります。具体的には以下のような取り組みが有効です。

・業務マニュアルのやさしい日本語化:専門用語を平易な表現に言い換え、図や写真を活用したマニュアルを整備する。
・ルーティン業務の手順書化:毎日の業務手順を見やすい形式で明示し、外国人材が自立して動けるよう支援する。
・コミュニケーション担当者の設置:配属部署にサポート役を決め、疑問や不安をすぐに相談できる環境をつくる。
・やさしい日本語でのOJT:ゆっくり・短く・具体的に話す「やさしい日本語」を職員全体で実践する。

こうした初期対応を準備することで、外国人材の不安を軽減し、早期に職場や業務に馴染み、戦力化につながります。

継続的な語学支援が「最大の戦力」を生む

外国人材の真の力を引き出すうえで見逃せないのが、継続的な日本語教育の支援です。入国後も定期的な語学研修や日本語学習の費用補助を行う施設では、1〜2年後にはN3(日常的な日本語を理解し自然な速度での会話に対応できるレベル)を取得する人材が増えており、入居者や家族との信頼関係も深まっていきます。

日本語がN3以上のレベルになり、その間培った1~2年間の業務経験を合わせると、日本人職員と遜色なく業務上のやり取りや申し送りができるようになります。さらに語学力の向上は、介護記録の記入や委員会活動への参加など、施設運営への幅広い関与を可能にし、日本人職員との協働も一層スムーズになります。

前述の通り、特定技能外国人の多くは20代から30代であり、体力があり習得スピードも速いです。語学力と介護技術の両輪が整ったとき、彼らは「若くて優秀な即戦力」として現場に欠かせない存在になることは間違いないでしょう。

キャリアアップを見据えた長期育成計画

外国人材の定着率と能力向上を同時に実現するためには、採用時から始まる長期育成計画が不可欠である。特定技能1号で来日する外国人材の多くは、介護福祉士の国家資格取得を強く望んでいます。介護福祉士を取得することで特定技能2号への移行(2027年施行予定)や在留期間の延長が可能となるため、長期就労に直結する目標として位置づけられているからです。

直近の国家試験(第37回、2025年1月)では、特定技能の受験者が前年の4,932人から倍増して10,406人を突破し、合格者数は3,435人(合格率33.0%)を記録しました。外国人全体の受験者は試験全体の約2割超を占めるまでに増加しており、受け入れ施設での育成支援が国家資格取得に直結していることが示されていいます。

受け入れ企業が採用後に取るべき育成ステップの例は以下の通りです。

・1〜2年目:業務習熟・日本語N3取得支援・介護技術の基礎確立
・3〜4年目:リーダー業務補助・介護福祉士受験準備(模擬試験・学習費用補助)
・5年目以降:介護福祉士取得・特定技能2号または永住権への移行支援・後輩外国人材のメンター役へ

このようなキャリアロードマップを入国時に明示することで、外国人材は「この施設にいれば自分の将来が拓ける」という確信を持ち、離職率が大幅に低下する効果もあります。外国人材の定着度調査(令和6年度、公益社団法人全国老人保健施設協会)においても、将来のキャリアパスが明確な施設ほど外国人材の継続就業意欲が高いという結果が報告されています。

高いモチベーションという強み

母国で日本語資格や介護技能評価試験に合格し、国境を越えて日本に来る外国人材はもともとモチベーションが高です。彼らは「介護の仕事で日本社会に貢献したい」「資格を取って安定したキャリアを歩みたい」という明確な目的意識を持っており、現場での評価も高い傾向があります。実際、複数の介護施設の管理者から「外国人職員は吸収が早く、入居者からも好評だ」「積極的に学ぼうとする姿勢が日本人職員に良い刺激を与えている」という声を聞きます。

こうしたモチベーションの高さは、正しい受け入れ体制と継続的な育成が組み合わさったとき、最大限に発揮されます。

まとめ:外国人材は「育てれば育つ」戦力である

外国人材の採用に不安を感じるのは自然なことです。しかし、その不安の多くは「知らないこと」「経験不足」から来ています。

・介護技術は日本人も外国人も現場で育てるもの
・日本語力は入国時の制約であり、継続支援によって確実に向上する
・資格取得と長期キャリアへの強い意欲が定着率を高める
・若い年齢層が高齢化する日本の介護現場を支える

外国人材が「即戦力」かどうかは、受け入れ側がどれだけ丁寧に育てるかにかかっています。最初の数か月に適切なコミュニケーション環境を整え、継続的な語学・資格支援を提供し、キャリアパスを見せてあげる。それだけで、外国人材は施設にとって欠かせない「長期的な大きな戦力」へと成長していくはずです。

「いつから1人で業務を担当することができますか?」
「外国人職員に夜勤をお願いすることは現実的に可能ですか?」
ここに対する答えは、明確です。「入社後にどれくらい本気で外国人材を育成し、日本語力向上と介護技術の習得をサポートしていたかによる」が私の答えです。

政府開発援助の事業を中心に、過去20年間30か国以上で、コンサルタントとして産業開発、人材育成、保健医療、教育など多様な分野での事業実施経験をもち、2018年は外務省の政府開発援助に関する有識者懇談会の委員を務める。

国内では経済産業省の日本企業の新興国市場開拓補助事業や農林水産省の地方創生事業、厚生労働省「「地域外国人材受入れ・定着モデル事業」」の実施責任者を担う。「令和5年度 厚生労働省 海外からの介護人材の戦略的受入れのための有識者意見交換会」の有識者委員も務め、外国人材採用の領域において幅広い知見と経験を有する。

PERSOL Global Workforce株式会社 代表取締役社長 多田 盛弘(タダ モリヒロ) PERSOL Global Workforce株式会社
代表取締役社長
多田 盛弘(タダ モリヒロ)