はじめての外国人材採用で6名採用を決断!受け入れから半年、いまは病院の「欠かせない存在」に。
~社会医療法人 山弘会 上山病院 特定技能・介護人材の採用事例~
大阪府寝屋川市に位置する「社会医療法人 山弘会 上山病院」は2025年11月に初めての外国人材を受け入れました。採用人数は6名。1985年(昭和60年)開院当初から365日24時間体制の「救急医療」を提供し続けている地域の中核病院が、なぜこのタイミングで外国人材の受け入れに取り組んだのか、また初めてにも関わらず、一気に6名を同時に採用した理由、そして就業から半年が過ぎたいま、外国人材採用についてどのように感じているか、副看護部長の佐藤さまにお話しを伺いました。
最初から一人や二人ではなく、複数名を採用することを検討。
外国人材の教育体制や日本の生活への適応などを総合的に考えた結果
―― まず、貴院について教えてください。
上山病院は、大阪府寝屋川市に位置する、救急対象患者を受け入れ急性期医療を主に担っている189床の病院です。また、急性期患者だけでなく、急性期治療を終えた患者さまが社会に戻られるための地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟などもあり、地域貢献を果たすためのトータルケアを目指した医療を提供しています。
―― ありがとうございます。今回特定技能・介護の人材を採用されたと伺いましたが、介護施設ではなく病院もこの在留資格を活用できるのですね!外国人材を採用したきっかけや理由を教えていただけますでしょうか。
いま日本の人口は年々減少しており、日本人の採用はなかなか難しい状況です。どの業種・職種でも人が足りない状況ですが、特に看護補助者(※看護師の補助業務を担う職種)の応募がかなり厳しく、もう少しグローバルに視野を広げて、特定技能の人材も検討するようになりました。
―― 本格的に検討を始められたのはいつ頃からでしょうか。また、初めての外国人材採用にもかかわらず、6名を同時に採用されていますが、その理由も教えていただけますでしょうか。
本格的に採用検討を始めたのは2年くらい前からでした。最初から複数名を採用した理由は2つあります。1点目は病院の中にはいろんな病棟があって、日本人と外国人のコミュニケーションの違いなどもあるので、各病棟に1~2名以上配置し、まずは各病棟(ユニット)の仕事を広く浅く知ってもらいたいと思ったからです。2点目は、私の過去の経験ともつながる理由からです。実は、私自身も以前海外で生活した経験があり、その時ホームシックになったことがありました。初めて日本に来る外国人材も同じだと思いました。一緒にコミュニケーションできる同郷者が少ないと、逆に日本の生活に慣れることが大変ではないかと…。こちらとしては1名でも6名でも受け入れや教育に関しては変わらないので、外国人材のメンタルケア面を考え、複数名の方を一緒に採用しました。
―― 一方、多くの事業者さまからは、一気に複数名を受け入れることはかなり大変という相談も受けますが・・・
事業者さまや施設での職種や業務内容によるのではと考えます。例えば似たような業務を対応しているように見えても介護現場と医療現場では組織体制や業務内容・研修内容などが違うこともよくありますので。
我々の場合は、ある程度まとまった人数での集合研修という形で新人看護師教育を継続して行っていますので、集合教育という点では慣れていたのだと思います。しかしながら、例えばマンツーマン教育方式を取られている事業者、施設だと今回我々のように初めから6名を一気に採用して受け入れることが難しいのかもしれません。また、施設や事業所の規模やマンパワーによっても受け入れる体制や状況は異なるのではないでしょうか。
医療の現場だからこそ大事なことがある。
分からないことを質問できる素直さ、積極的に業務を覚えようとする姿勢。

―― 採用時の面接はオンラインだったでしょうか?面接での印象や採用を決めるポイントはありましたでしょうか。
そうですね。面接はオンラインで、合計12名の方にエントリーいただき、面接を実施しました。オンラインだったこともあり、最初はやはりお顔とお名前が一致する、すぐ覚えるということは難しかったので一人ひとりの雰囲気や伝わってくる印象を見るようにしました。あと、重要だと思ったポイントは「分からないこと」を質問する(できる)か否かという点でした。結果的に、面接中に我々が日本語で質問したことに対して素直に「聞き取れなかった」と言える方を採用しました。
―― その理由についてより詳しく伺えますか?
病院にとっての「安全」につながるポイントだからです。面接中、こちらの質問したことが、理解できたのか、できてないのかという意思表示がきちんとできる方は、仕事においても分からないことはしっかり聞き返してくれると思ったからです。
また、人材のみなさまは、ご自身のプロフィールの紹介、経歴、日本で働きたい
理由などの基本的な情報においては、事前に準備して練習されていることもあって、一人ひとりの個性や性格をキャッチすることが難しいところもあります。
そのため、面接中に分からないことを質問していただくと、それだけでその方の個性や性格がわかったりもするので、そういった点を重要なポイントとして人選させていただきました。
―― なるほど!私も大変勉強になるポイントでした。分からないことをスルーしないことは大事ですね。コミュニケーションや仕事の誤解が生まれることもありますから。
その通りです。
―― 今回が初めての外国人材採用ですが、悩んだことや不安だったことはありますか?
生活様式の違いと言いますか、私も海外で生活したことがあるので、宗教上の違いや人間関係、コミュニケーションの違いなどが不安でした。こちらの日本人スタッフが、日本人の感覚で、彼女たちとコミュニケーションをとってしまうと、隔たりが生じるというか、お互いが理解しあえなくなるのでは…というところが一番危惧していた部分でした。
今回私たちが採用した方々は全員ネパールの方で、ネパールは親日な方が多く、実際あってみるとやさしくて人懐こい性格で我々日本人の懐に入り込みやすい方でしたので安心しました。

―― やっぱりコミュニケーションの部分が一番心配ですよね。実際受け入れてみて、やっぱりそういう課題はありましたでしょうか?
そうですね。来日されて間もない頃、最初は彼女たちも非常に緊張していたので、なかなか積極的にコミュニケーションをとることが難しい感じでした。先般お伝えした通り、同郷の方を複数人採用することで、外国人材にとって寂しい気持ち(ホームシック)にならないのではと思ったのですが、最初は6名が集団で固まりすぎる問題もありました。
まず心の距離を縮める必要があったので、例えばお引越しのあとに一緒にランチにいったり、その地域のお買い物エリアに連れて行ったりもしました。あとは、日本(大阪)で行ってみたいところを聞いたら、「海」と話していたので、スカイビルの展望台で、海や町全体を見に行ったりもしました。我々は上司でありながら、お母さんのような存在でもあると、そういう風に思いながら、彼女たちと接していくうちに少しずつ打ち解けてもらえるようになりました。
―― ほかにもコミュニケーションや業務指示などの面で具体的に工夫した点はありますでしょうか?
特別なことではないですが、「無意識にネイティブ日本語のスピードで話す」ことに注意しました。当然日本人同士で仕事している時のスピードで話すと聞き取れないことがほとんどなので、ゆっくりとわかりやすい言葉で業務指示をすることを心かけました。医療の現場で何より大切なことは「安全」ですので、彼女たちに何かを依頼するときは、業務内容を本当に理解しているかどうかチェックすることを徹底しました。 またフィードバックをより具体的に伝達しました。それ以外にも、業務内容に関するチェックリストを作成し、実践内容を伝えることで、到達スキルの可視化から業務を安全に自立して行えるように支援しています。そうすることで彼女たち個々の課題も明確になっていきます。
「医療従事者」として自覚をもって少しずつできることを増やしていく。
いまは欠かせない存在になった6名

―― 6名の方が着任して、約半年がたちましたが、いまはいかがでしょうか?
昨年11月後半に着任しましたが、まず半年間は基本的な挨拶、コミュニケーションができることを目指しました。外国の方とは言え、病院で働く医療従事者として自覚をもって働いてもらわないといけないので、それを実感してもらうことから始めました。そんな中で、一番病院にとって大事なことは「安全対策と感染予防」ですので、それを理解してもらえるように指導しました。
彼女たちの仕事は医療的な判断を必要としない、看護師の補助業務を担う看護補助者という職域になります。ナースの指示に従うということになりますが、例えば病院ならではのベッドメーキング、感染リスクなどを防ぐ汚物の処理など、自ら能動的に動いてもらうと本当に助かります。できること(業務領域・種類)を少しずつ広げていき、できないこと(課題)を明確にしていく、そのためにしっかり情報共有できるように可視化して指導しました。今は病院のレイアウト(構造)もすべて把握していますし、24時間業務の病院で働くため、シフトやタイムスケジュールにも慣れてこられました。日勤や早出、遅出の勤務形態はもちろん、少しずつできる業務が増えてきているので、今は欠かせない存在になっています。
―― 患者さまやご家族のみなさまの反応はいかがでしょうか?
実はネパールの人材を選んだ理由の一つが、日本人と印象が近いという点もありました。もちろんよく見たら外国人だと気づくこともあると思いますが、病院では基本マスクをつけて仕事をしていますので一見して気づかれません。また彼女たちは非常に礼儀正しく患者さまや来院されたご家族様に丁寧に接してくれているので、ご意見やご指摘をいただいたことは一度もありません。
―― 今後6名の外国人材に期待することを教えてください。
いまは基礎的な業務の対応をしていただいていますが、できること・できないことをできる限り可視化して提示しているのでこれから約5年間、しっかり医療従事者として成長していただきたいと思っています。今後我々も彼女たちにより日本の職場風土や文化を理解してもらえるようなサポートを行っていきたいと思っていますし、そのための研修は必須だと思っています。少しずつ医療従事者として自覚を持ち、成長していってもらえればと思っています。実際6名それぞれが少しずつ自分ならではのキャラというかカラーが出てきていて、数名は介護福祉士を目指したいと具体的な目標を言ってくれる方もいるので、ぜひ応援したいと思っています。
―― 最後に外国人材を採用してみての感想をお願いします。
医療と介護の業界は、今後日本ではさらに不可欠な存在、産業という位置づけになっていくと思っています。一方で、人口減少による労働力(生産年齢人口)不足も加速化していくので、採用においては、もう少しグローバルに範囲を広げて取り組みをしていかなければならないタイミングだと思います。我々自身も、今回6名の方を受け入れてみてより切実に感じています。近隣の病院や介護施設も人材確保への危機感は非常に高く、より一層の「医療・介護に特化した外国人材」の採用枠が広がることを願っています。
※本記事は、2026年7月中旬の取材をもとに作成しています。
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